著者インタビュー


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■より優れた「漢字の読み検索」を発案する一助に

弊社から2016年6月『つくりから漢字に親しむ自分辞書』を上梓された瀧上紀吉さんに、書籍づくりのきっかけと経緯、実際に本づくりを体験して感じたことなどをうかがいました。

瀧上さんは、もともと漢字に詳しかったり、漢字の研究をされていたりしたのでしょうか。

いえ、まったくの門外漢です(笑)。子どもの頃は国語より算数が好きで、大学も仕事も理系でした。

漢字に興味を持ちはじめたきっかけは?

孫ですね。10年ほど前、小学生だった孫に「おじいちゃん、この漢字なんて読むの?」と聞かれることがあり、読めないことがあったのです。これはよくない。私は読めない漢字があって恥をかいたとしても、孫に同じように恥をかかせるわけにはいかない、と(笑)。その頃は「漢字の本をつくろう」という気持ちはないまま、漢字のことを調べはじめました。

「調べる」と一言で表現しても、いろいろなアプローチがありますね。

そうですね。最初は、難読漢字の読みを調べてノートにメモしておく程度でした。ところが、しばらく経った頃、「寺」という漢字を見ていて、ひらめいたことがあったんです。

「寺」という「つくり」にどのような「偏」や「冠」がつくかで、いろいろな読み方や意味が生まれる。それに、「つくり」からのほうが漢字を集団で覚えやすいように思いました。そこで、「つくり」から調べて、漢字の集団分けをしはじめたのです。

■「時計の針」で、ひらめいた
『つくりから漢字に親しむ自分辞書』。タイトルからして、「辞書」であるようにも一概にそうとはいえない意味合いがあるようにも感じました。タイトルには、どんな意図が込められているのでしょうか?

「つくりから漢字に親しむ」ということの意図は、文字どおりですね。従来の「漢字の辞書」というと、へん(偏)や画数から漢字の読みや表記を探していく方法が一般的でした。それを、「つくり」から、その「つくり」の一定の場所から検索の記号を考案し、「つくり」の検索記号をもとに漢字の「読み」を調べることができるスタイルにしたのです。

「自分辞書」というのは、「ひとまずは自分で考案した検索記号をもとに、自分でやってみた辞書的な本」といった意味合いがあります。さらに、「私の辞書」ではなく、読んでくださった方に「この本を参考に、自分なりのよりよい検索手法などを編み出してください」という意図も込められています。

漢字といっても、何万字もありますよ。

ええ。まず、常用漢字から分類していったのですが、やはり少し物足りない。そのとき、主婦の友社が発行する『こんなとき、こう使う10,000語』という本の「難読熟語・頭出し辞典」を読んで漢字の集団分けのヒントを得て、集団を見直し、漢字数を4000字レベルに増やしていきました。

漢字の集団分けから検索のしやすさを求めていく作業は、骨の折れる作業です。

本当に大変でしたよ(笑)。「つくり」から単に集団分けしてみると、400〜500集団になってしまった。それを並べただけでは意味がありませんよね。そこで、「つくり」の特定の場所(つくりの1画目)を検索の記号にしてみました。すると、30ほどの検索記号に分類できました。

さて、それをどう並べるか、というところにもハードルがあって、「時計の針」のように並べみたらどうなるだろう? とひらめいたんです。それは、本当に、ひらめきというか、思いつきというか(笑)。

最初は時計の針が9時を指すところ、地平線や水平線から月や太陽が昇っては沈むイメージをして並べてみたのですが、どうもしっくり来ない。そこで、頂点、12時のところから並べると、しっくりきたわけです。

言葉にしてみると、すぐできたような印象ですよね。でも、漢字について調べ始めてから検索記号によって分類してみるまでに、3年くらいかかっています(笑)。分類やら並べ替えやら、Excelがなければ実現できなかった作業です。

そのころから「本にまとめることができれば」と思っていたのですね。

そうともいえますが、実際には、自分の趣味・遊びとして漢字を調べていただけで、きっとたくさんの人の知恵を集めたら、いいものができるかもしれないと思っていただけです。

■より精緻に削る「根気と集中力」

実際の本づくりを始めたのは?

2年ほど前の大学の同窓会のときからです。友人に「出版社を知らないか?」と相談したら、河出さんをご紹介いただきました。いま思うと大雑把で「雑な発案」でしたが、それを河出さんに見せてお話ししたところ、「おもしろそうだ」と思ってもらえて、そこから、漢字が趣味・遊びではなく、仕事になりました(笑)。囲碁もゴルフも絶って、本づくりに集中しましたね。

本づくりのなかで、とくに大変だったことは何でしょう?

初めてのことなので、いろいろ教えてもらいながら進めていったのですが、まず挙げられるのが「削る作業」ですね。一定のページ数にまとめるのに、膨大な漢字の数をヌケやモレがないように削らないといけない。300400ページの本をイメージして、漢字をあらためて精査しつつ削りました。

それを第1関門とすると、第2関門はより緻密な検索記号に修正したことです。これもできるだけヌケやモレがなく、より正確に検索するため、最初の検索記号に「交差・接触」(検索記号とした1つの画〈=かく〉に交差したり接触したりする画の「数」のこと)という分類を加え、さらに、そうしてつくった検索記号に番号を振っていきました。そうしてつくった検索記号・番号によって漢字を並べ直すのですから、集中しないとミスしてしまう。根気と集中力のいる作業です。

その作業する姿を、ご家族はどのようにご覧になっていたのでしょうか?

たとえば、家内に「漢字の画数って辞書によって違うんだね」と話しかけても、本づくりを始めた頃は応えてくれていましたが、そのうち生返事(笑)。孫も「おじいちゃんはパソコンで一日中ピコピコと遊んでいるだけ」といった印象ですね(笑)。

それでも、最終段階の校正紙のチェックでは家内にずいぶん手伝ってもらいました。「数ページで1万円」といった約束をしたのですが、早めに契約どおりに払わないと……ですね。

でき上がってみてのご友人・知人の方などの感想を教えてください。

新鮮な驚きをもって見てくれる人もいますし、「よくわからない」という人もいます。検索をやってみせると、驚きながら「瀧上さんはやっぱり技術屋さんですね」と言ってくれる人もいますね。

当初は、300400ページの本を想定していたのに、検索記号を精緻にしたことなどもあって結局800ページほどになったのには、まず、本を手にした私が驚いてしまいました(笑)。「すごいものをつくったんだなぁ」と感慨ひとしおです。

最後に、今後、本づくりに取り組む人へのアドバイスをお願いします。

自分の思っていることと他人の思っていることは往々にして違います。そのため、自分だけが楽しむ本をつくるということと、読む方にとって意味がある本をつくるということは、視点や次元がまったく異なるということでしょうか。

読み手にとって、相応しい内容かどうかを第一に考える。本づくりを進めながら、その部分をあらためて理解しました。

タイトル 『つくりから漢字に親しむ自分辞書』
著者 瀧上紀吉(たきがみ のりよし)
価格 3800円(税別)
商品情報 A5判、上製ケース入り、総ページ数768ページ
コード ISBN978-4-309-92091-7
経歴 1940 年愛知県生まれ。国立大学(工学部)を卒業後、地方公務員(研究職)、橋梁のメーカー(営業部門)を経て、2006 年退職。孫に漢字を教えるという気持ちから漢字の構造・探し方に興味を持ち、足掛け9年にわたり研究を重ねる。

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