8月に開催された「自分史フェスティバル2014」の講演の上映会。
私も運営スタッフとして終日活動していたため、講演を聞くことができず、この機会を待っていました。
上映したのは村田裕之氏(東北大学特任教授)の講演。
「人はなぜ自分史を書きたくなるのか」
自分史を脳科学や心理学から分析した内容で、とても面白い内容でしたのでご紹介したいと思います。
(1)
ジョージワシントン大学のジーン・コーエン博士の著書によると、人の後半生の心理発達には、「再評価段階」「解放段階」「まとめ段階」「アンコール段階」の4段階があるということです。
このうち、「まとめ段階」というのは60代後半から80代にかけて見られるもので、特徴としては「世の中に恩返しをしたくなる」心理が強くなるそうです。
その現れとして、地域活動やボランティアの参加が上げられます。加えて、自分の体験を後世に役立ててほしいという思いから「自伝」を書きたくなる心理も強まるということです。
(2)
記憶には「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3種があり、このうち「長期記憶」には言葉にできる記憶(宣言的記憶)と言葉にできない(非宣言的記憶)があるというこです。さらに(宣言記憶)は「エピソード記憶」と「意味記憶」に分かれるのですが、この「エピソード記憶」の存在が「自分史」に影響があるようです。
エピソード記憶は何十年たっても覚えている長期記憶です。人間の脳は加齢とともに神経細胞が減少していきますが、神経線維は増えていくそうです。神経線維というのは脳と記憶を結ぶパイプのようなもので、年齢を重ねることで記憶へのアプローチがより豊かなものになるというわけです。
つまり何が言いたいかというと、(1)の「まとめ段階」を迎えた年代の人たちは「自分史」を書きたいという心理欲求が強まり、(2)の「エピソード記憶」へのアプローチが豊かになることから、「自分史」を鮮やかに、そして生き生きと表現できるようになる、ということです。
人は年齢を重ねると「自分史」を書きたくなるようにできているのかもしれませんね。